褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「あ、おかえり」
「た、ただいま……」
部屋から出てきた兄と目が合い、緊張が走る。
どうしよう、小山先輩の顔がチラついて顔を直視できない。
ダメだよ。こんなあからさまに挙動不審になってたら怪しまれちゃう。
逃げるように部屋に駆け込み、ドアを閉めようとしたその時。
「なぁ……今日、小山に会ったんだろ?」
ドアを閉める手が止まり、ピクッと体が揺れた。
「なんで知ってるの……?」
「さっき電話がかかってきて、30分くらい前にここに来てたんだよ。俺らに謝りに来たんだってさ」
「え……⁉」
耳を疑った。
あの小山先輩が謝罪しに⁉
同じ場所にいたのに、あの後わざわざ家まで来たの……⁉
「嘘……」
「嘘じゃない。信じがたいけど本当だ。中学時代に大喧嘩したこと、転校の話をずっと黙っていたこと。それと……実玖に酷いことを言って傷つけてしまったこと。全部謝ってきた」
転校した後、私達を傷つけたことを後悔した彼は、ずっと前から謝りたかったらしい。
だけど、会う勇気がなくて謝れずにいた。
しかし……今日私の姿を偶然見かけて、勇気を出して話しかけたのだそう。