褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
外泊すると決まってから、景斗の家族に失礼のないように、言動と身だしなみには気をつけていた。


夜中に実玖ちゃんとキッチンで会った時もそう。

部屋に入る前に彼女の声が聞こえたため、慌てて服と髪の毛を整えてから中に入った。


実玖ちゃんにも心を許してはいるけれど、この姿を身内以外の女の人に見せたのは初めてで……。



「あ……兄に、先輩を起こすよう頼まれたんです……」

「え……?」



タオルケットから目だけを覗かせる。

視線の先には、ドアの向こうでクククッと楽しそうに笑っている景斗の姿が。


頭にカーッと血が上っていく。



「景斗っ! どういうつもりだ!」

「えー? どうって約束通りだけど?」



や、約束……⁉ 何のこと⁉



「覚えてねーの? 『30分経っても起きなかったら、実玖が起こしに来るからな!』って言ったら返事したじゃん」

「は⁉」



ケラケラ笑いながらやって来た景斗。

再び頭をフル回転させ、記憶を呼び起こす。


そういえば、「飯冷めるぞ?」って言った後、何か叫んでたっけ……。

あれ、「飯食っちまうからな!」じゃなかったのか⁉
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