褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「おぅ、サンキュ」



床に座って談笑中の兄達の輪に入り、テーブルの上におぼんを置く。


……大丈夫、大丈夫、落ち着け。


再び深呼吸をし、速くなった心臓の鼓動を落ち着かせる。



「こんにちは~! はじめまして! もしかして妹さんですか?」

「はっ、はい……」



おぼんを置いた瞬間、突然兄の友達に挨拶され、肩がビクッと跳ねた。

どうしよう、挨拶しないといけないのに顔を上げられない。



「ごめん。こいつ引っ込み思案だからいつもビクビクしてるの。気にしないで」



俯いていると、兄がお菓子を口に詰め込んだまま友達に説明し始めた。


はぁ……またやっちゃった。

もう高校生になるんだから、引っ込み思案も卒業しないといけないのに。


自分の臆病さに情けなくなって、その場から逃げるように立ち去ろうとしたが、

お菓子を食べようとお皿に手を伸ばしている彼とバチッと目が合ってしまった。
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