褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
愛犬の話をしていると。



「……お兄ちゃん泣いてるの?」

「昔一緒に遊んだの思い出してさ……」



すすり泣く声が聞こえてきたかと思えば。
まさか泣き始めるなんて。


涙をこぼす兄にティッシュを渡す。

写真を見て涙を流すのはわかるけど……下手な絵で涙を流されると気まずいからやめてほしい。



「実玖ちゃんは昔から絵が上手かったんだね」

「い、いえそんな……全然ですよ」

「そう? 上手いと思うけどなぁ。俺リアルな絵全然描けないもん」



笑顔で絵を見続ける西尾先輩。

なんか先輩って、人を褒めるのに慣れてる感じがする。お世辞言うの得意そう。



「そんな……中学生になってからはずっと服の絵しか描いてないので、画力は小学生で止まったままだと思います」

「おい、俺の絵見て苦笑いしたくせに謙遜すんな。ケンカ売ってんのか」



泣き終えた兄がギロッと睨んできた。


私は昔から褒め言葉を素直に受け取れずに、いつも謙遜してしまう。

悪い癖なのはわかってはいるのだけど、自分に自信がないため、なかなか「ありがとうございます」の一言が言えないのだ。
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