褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「おい大丈夫か……? 告白失敗しちゃったみたいな空気になってるぞ」

「怜也……何やってるんだよ……」



背中を擦りながら片手でポケットの中を確認するも、何も出てこなかった様子。

多分ハンカチかティッシュを探したんだろう。


すると、泣き止まない綿原さんを、怜也がそっと優しく抱き寄せた。



「ひゃーー! 抱きしめたぞーー!」

「ちょっ、揺らすなっ」



肩をぶんぶん揺らして小声で叫ぶ景斗。


おいおい、ここ外だぞ。
いくら周りに人がいないからって大胆すぎない⁉



「お前の友達って結構大胆なんだな」

「いやぁ、普段はこんなことしないんだけど……」



そっと体が離れると、怜也が綿原さんに何か黒い物を手渡した。


……え? サングラス?


それまでの重たい空気から一変し、一瞬で和やかな空気に。

頭が追いつかず、脳内にはハテナマークが大量発生している。



「あっ、電車……! 行くぞ!」

「ええーっ、いいところなのにー」



遠くから電車の音が聞こえ、駅に向かっていたことを思い出した。

「もうちょっと見たいー」と景斗はごねているけれど、このままだとキリがないので泣く泣く退散することに。
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