勿忘草図書館の死神さん
“狐面さん”――誰が最初にそう呼んだか定かじゃないが、図書館の司書をそう呼ぶ。別に狐面をつけてるわけでもないから、おそらくは名字の狐森からだろう。



狐森縁(きつねもりえにし)。年齢不詳。見た目は十代後半くらいに見えるが、本人曰くそんなに若くもないとのこと。しかしどの年齢も否定するため、年齢不詳で定着。司書と宮司を兼任していたりと謎も多く――ちょっと風変わりな人である。
 



そして、また呼ばれる。



「月島」

「ほんと人の話聞きませんよね。むしろもう才能ですよそれ」

「才能じゃない、ふつうだ」



幾度ともなくこんなやりとりを繰り返している。一応念を押しておくと、喧嘩ではない。



正直もう読書する気も失せてしまった少女は、ため息混じりに言った。



「――それで、今日はどんな話なんです?」

「なんだ。月島もやっぱり楽しみにしてるんじゃないか」



勿忘草図書館にカスタード色の時間が流れる。


穏やかで優しくて、ほんの少しだけあまい。



< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

魔王様と暁の姫
椿灯夏/著

総文字数/4,213

ファンタジー9ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
すべての始まりはたったひとつの願いだった。 “大切な人を失いたくない” 「例え偽りの記憶でも構わない。自分にとって、本物なら」 始まりは雨。 「探したよ“魔王様”」 ーー例えどんなに酷い物語(結末)だとしても。 姫のために紡ぐ(生きる)と決めたんだ。もう、何からも俺は逃げたりしない。 これは明けない世界で紡ぐ夜明けの物語。 (更新お知らせ) 雨空の出会いまでが更新 こちらの魔王様の物語は旧作品としてさせていただきたいと思います。こちらも更新しつつ、新の方にはプラスがつきます。
花の海駅より君に描く、“約束の花”が咲いたとき
椿灯夏/著

総文字数/5,215

恋愛(純愛)12ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
夜明け前――花の海駅で“花”と出会った。 りんご飴のように紅い瞳をした少年。 スケッチブックに描く、花。 泡沫の夏に咲く、淡い出会い。
鳥籠の死神
椿灯夏/著

総文字数/3,601

絵本・童話21ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ただ生きているだけなのだ。 ただ、生きたいだけ―― 愚かな人間とただひっそりと生きたいだけの死神。 「世界は人間だけの世界ではない」 レビュー、感想ありがとうございました 希乃己様 お稲荷様

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop