堕天使、恋に落ちる
「違う……消えるのは、鏡子。
お前だ……。
お前の存在全てに吐き気がする。
早く、消えろ……」

え―――?
鏡子さん?
「一、徹……あなた、その顔……」
「どけ……」
「ひっ!」
ひきつる、鏡子さん。
それもそのはず、そこにいる一徹はいつもの穏やかな一徹ではない。

No.1ホスト“春日 一徹”の輝きも、穏やかで優しい表情も、嫉妬で少し狂った顔も、微塵もない。

そこにいるのは、魔王のような恐ろしい人間だった。

鏡子さんも、あまりの怖さにその場に腰をぬかし、へたりこんだ。
そして一徹がゆっくり私の方に来た。

「由那…もう大丈夫だよ…俺はここにいる。ずっと由那の傍に……」
と私の目を見て言ってくれた。
その一徹の表情は、つい先程の一徹とは別人のように、穏やかだった。
「一徹…私……」
「手…見せて?痛かったね……すぐ手当てしようね…?」
と私の真っ赤になった両手を、優しく擦った。

「あ、命?ちょっと頼みがある。―――うん。そう、店に来てくれ!」
そして命さんに電話をした。
「おい、鏡子。お前、ここから離れるなよ!あとで相手してやる。
地獄を……
見せてやる」
そう言って、私を抱きかかえ部屋に入った。
< 63 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop