お日さまみたいな温かい君に包まれて
お礼を言うと、爽汰はボソッと言い残して洗面所へ入っていった。

図書館で勉強か……。
爽汰も嘘が上手くなったな。さすが姉弟だ。



『雪塚さんのこと、たくさん知れて良かったなって言いたかっただけ』



部屋に戻って荷物を片づけていると、脳内で景斗くんの声がこだましてきた。

同級生に会った時、しばらく胸騒ぎが収まらなくて、話そうか迷ったけど……あぁ言ってくれてすごく嬉しかった。

だけど……。



『実は俺、雪塚さんのことが……』



ごめんね。また嘘ついちゃった。
本当は蚊なんていなかったの。


昔話を聞いてくれただけじゃなく、わざわざアトラクションを回る順番を考えてきてくれて、突然家に泊まるのも承諾してくれて。

それに、お化け屋敷でブルブル震えて動けなかったところも助けてくれて。

なのに……。



「ごめんなさい……」



きっと何度も練習してきたはず。
もしかしたら、遊んでいる間も、ずっと考えていたのかもしれない。

あんな話をした後だったから、相当勇気を出したはずだ。


なのに……その先の言葉を聞くのが怖くて遮ってしまった。


感情がじわりと込み上げる。

バッグからタオルを取り出して顔を覆い、その場にうずくまって静かに涙を流した。
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