悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 彼の声にレイアたちが我に返ってわたしを解放。
 ドルムントがわたしのために新鮮な空気を送ってくれる。さすが風の精霊。

 ありがとう、ってああそうだった。彼にもお礼を言わなくちゃね。わたしは上を向く。
「そういえば、王宮ではありがとう。あなたがフローレンスの風の精霊を追い詰めてくれたんでしょう?」

「い、いえわたしは特に何も」
 ドルムントは頭に手をやり謙遜。

「あら、いいじゃない。ドルムントはこう見えても高位の精霊なのよ」
「泣き虫だけどすごいのー」
「見えないけどねー」

 レイアの口添えに双子が水を差し、ついでにティティも「気弱なくせに位だけは高いんですですぅ」と言った。

「さあリジー。今晩くらいはここでゆっくりしてもいいけど。明日にはゼートランドの王宮に行こうな」
 わたしは人の肩に手を置いたレイルのそれをしっかりと払いのけた。

「何言っているのよ。わたし、一言もあなたと結婚するなんて言っていないわよ」
「ですですぅ」
 わたしの反論にティティがすぐに追随する。

「いや、あのとき否定しなかっただろ。あれはわたしもって意味じゃないのか?」
「あのときはびっくりしたの! 大体ねえ、いきなり結婚とか飛躍しすぎよ! わたしたちまだ単なるオトモダチじゃない」

「いや、あの花火の夜にいい雰囲気になっただろ」
「なってない! 断じてなってない」

 あ、あのときはちょっとまあ。雰囲気にほだされたというか。
 えっと、その。そういうときってあるじゃない。

 その場の勢いというか。
 わたしの顔に急に熱が集まってくる。うわ。ちょっと焦る。どうして顔が熱くなるの。

「ほら、顔が赤くなってる」
 レイルが面白そうに指摘をしてくる。

「ちょっと! からかわないで」
「いや、からかってない。大まじめだ。ちゃんとリジーの両親にも挨拶に行こう。それで盛大な結婚式を挙げよう」
「あのね……」
 色々と面倒なことになるに決まっている。わたしは、もう権力とかどうでもいいのに。

「根回しと交渉なら俺の得意とするところだから心配するな」
「だからね……」

「なんてったって、双子から守護されている竜の乙女だしな。大丈夫。リジーは可愛いし、いい子だから俺の両親も気に入る」

「いや、だからね」
「不名誉な噂は今日のあれで払しょくされただろう」

「ちょっと、待ってって」
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