悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「結婚式は来年の春ごろか。それまでは俺のうちでゆっくりしていればいいよ」
「ええええ~、駄目だよぉ。リジーはずぅっとうちにいるの!」
「そうよ。わたしリジーと一緒にまたお菓子作りたいもん」

 双子がレイルの服を引っ張り始める。
 彼の計画に大いに申し立てしたいらしい。よし、頑張れ。

 でもわたし的には来年の春にはここからも出て行って、いよいよ自立する予定だけどね。

「よし。だったら、たまにうちに遊びにおいで。庭広いし、多少暴れても大丈夫だ」
「本当?」
 二人の顔がぱあっと輝きだす。

「ねえ、お母様、ゼートランドに遊びに行ってもいい?」
 ファーナがレイアに尋ねる。

「そうねえ。あまり迷惑をかけないのよ? 最初はわたくしもご挨拶に行こうかしら」
「そうだね。私たちの大事なリジーを預けるのだから挨拶は必要だね」
 レイアの言葉にミゼルもがぜん乗り気な様子で。

「私たちがついているから大船に乗ったつもりでお嫁に行くといいよ、リジー」
「よかったわね。仲直り出来て」
「うわ。ちょっとレイアったら」

 わたしは慌てた。

「なんだ、リジーも俺とちゃんと話し合いたかったんだな」
「そ、それは。だって……あのときはついカッとなっちゃったわけだし。……その、ありがとう。助けに来てくれて」

 今しかないと思ってわたしは素直に感謝を告げた。
 彼はわたしの手を取り、そっと口元へ。
 うわ。そういう気障なことをさらっとしないでほしい。

「これからも末永くよろしく。リーゼロッテ」
「だ・か・ら! それとこれとは話がちがーうっ!」

 わたしの大きな声が谷間の黄金竜の住まいに響いた。



 その後。
 わたしへの好意を隠さなくなったレイルは各所に根回しをし。また、本格的な冬を山奥で過ごすのはリジーも大変だろうという説得に負け、わたしは一時的にゼートランド王宮に滞在をすることになった。

 ほんっとう、あくまで一時的だから。って念押しをいろんな人にするたびに、素直になれなんて言われたけれど。わたし、いつでも素直だからね。


 ちなみにフローレンス・アイリーンとヴァイオレンツの婚約が一度白紙に戻ったという噂がゼートランドの王宮にも聞こえてきたのもまた別の話。




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