悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしはうんと頷いた。本題はここから。わたしはそのまま続ける。

「けどね。どう手伝ってほしいかをわたしに聞いてほしかった。そうしたらわたしはこういう風に助けてほしいとか、今は必要ないとか答えることができた。いきなり魔法を使ったら、今みたいに誰かがびっくりしちゃうかもしれないでしょう」

 わたしはゆっくりと二人の目を見て話す。動機はともかく二人はわたしを思って行動をしてくれたのだ。断じて面白そうだからとか、退屈していたからとかではない……はず。だと信じたい。
 というところをまずは認めることにした。それから伝えることは伝えないと。

「……うん」
「わかった」

 言いたいことが伝わったのか、二人は少ししょんぼり顔でうなづいた。

「ちゃんとわかってくれてよかったわ。じゃあ、わたし行くから。二人ともドルムントの言うことをちゃんと聞いていい子にしているのよ」
 わたしはあっさりと別れの挨拶をして再び歩き出す。

「えぇぇ! 言っちゃうの?」
 慌てたフェイルがわたしの後を追いかける。ファーナも同じようにわたしに近寄ってきた。

「当たり前でしょう。この道、あとでちゃんと直しておきなさいよ。植林でもして」

 だいぶ歩きやすくなった森の中をわたしはひたすらに突き進むんだけれど……。

 結構な時間を掛けて歩いているのに、一向に人里につく気配が無かった。
 というか、景色が変わらない。双子竜のやんちゃのおかげで一本道ができたはずなのに、それを歩いていればどこかにはたどり着くはずなのに。

 わたしはなぜだかぐるぐると同じ森を歩いているような錯覚に陥った。

「あ、あれ? ここ少し前にも通った気がする」

 見覚えのある木の枝の形に首をかしげる。

 双子竜は相も変わらず人間に化けたままわたしの周囲をうろちょろしている。ずいぶんと長い間一緒に歩いているおかげでファーナのスカートからは竜のしっぽが見えている。どうやら長い間しっぽをしまっておけないらしい。

「リジー様、そろそろ諦めませんか?」

 そっと虚空から声を掛けてきたのはさきほどのドルムントだ。
 彼はわたしの身長の少し上にぷかりと浮いた状態で姿を現した。

「あきらめるって、どういうことよ」

 わたしは眉を顰めた。
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