悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「それは、ですね。あなたが竜の子供たちを諫めたことに森の精霊たちが感心しまして。要するに……あなたがいれば子供たちの暴走も少しは和らぐのではないかと、期待をしまして。その……あなたを森から出さないように……」

「精霊たちが意地悪をしているってこと?」

 わたしは大きな声を出して立ち止まった。
 どおりでさっきから似たような場所をぐるっぐる歩いていると思ったわ! こんちくしょう。

「ちょ、どうにかしなさいよっ!」

 わたしはドルムントにかみついた。子供とはいえ黄金竜の暴走なんてわたしに止められるはずもないでしょうに!

「いえ、無理です。森の総意なので」
 ドルムントはあっさりと白旗を上げる。

「ねーねー。ぐるぐる回るの飽きちゃったぁ」
 ファーナがわたしのチュニックのすそをつんつん引っ張って、その場にへたり込む。

「わたしだって喉乾いたし、お腹空いたわよ」

 一歩、また一歩人の住まう場所に近づいているかと思っていたから頑張って歩けていたのに。

「とりあえず、戻りませんか? ご飯も飲み物もたんまりと用意していますんで」
 ドルムントの遠慮がちな提案にわたしはきっと鋭い視線を向けた。

「そんなもん用意する暇あるなら今すぐわたしを人里に送っていきなさいよぉぉぉ!」
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