悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「ふうん。魔法の使える騎士さんってわけね」
「……まあね」

 彼は笑顔のまま肯定したが、それ以上のことは言うつもりが無いらしい。
 笑顔を張り付かせたままの顔でこちらを見つめてくる。

「で、きみはどうしてミゼル夫妻のところへ?」

 と、今度はレイルからの質問。そりゃそうだろう。竜の住まいを訪れたら人間の客人が板のだから。人がおいそれとやって来れる場所ではないことは彼も十分に知っているらしい。

「一応、彼らの住まいだからな。人払いの結界が張られているんだ」
「そうなの」
 わたしはレイアに視線を移した。

「そうねえ。わたくしたちも子育て中だし」
 レイアは首を少しだけ傾けて微笑んだ。

「実はレイルを最初に見つけたのは子供たちだったの。最近、本当にやんちゃになってきて」
「竜の住まいを訪れようと試行錯誤をしていたらある日ちびっこ竜が目の前に現れたんだ」
 レイルが補足する。

「人間がめずらしかったんだもんー」
「ねー」

 フェイルとファーナがそれぞれ言い添える。好奇心旺盛な双子竜たちに導かれてこの住まいに招かれたのはわたしと一緒ということらしい。まあわたしよりもレイルの方が穏便だったのだろうけど。

「わたしも似たようなものよ。旅をしていたらフェイルとファーナに拾われたの」
「なるほど」

 あ、このざっくり説明でいいんだ。
 まあ詳しく説明するのも面倒だったし楽だけど。

「リジーは行き先も未定だったからしばらくここに留まって、子供たちの面倒を見てもらおうと思っているの。子供たちもリジーによく懐いているから」
「物は言いようですよね」

 懐くっていうか、完全に新しいおもちゃ扱いされていますけどね。
 わたしの乾いた突っ込みを華麗にスルーするレイア。これ完全にわざとだよね。わたしの強い視線を彼女はなおもそらっととぼける。

「だってね! レイルが教えてくれたんだよぅ」
「何を?」

 フェイルがわたしのスカートのすそを引っ張る。

「竜とお友達になった人間は、竜の背中に乗って空を飛ぶって!」
「だからわたしたちリジーを背中に乗せてお空をびゅーんって飛びたかったの!」

「僕とリジーはお友達でしょう?」
「わたしとリジーはなかよしさんでしょう! 一緒に元気よく遊ぶのがお友達って、レイル言ってたよ!」

 子供たちは一生懸命話し始める。
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