悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 どうやら先ほどのフォローのようだ。二人なりに理由があったらしい。

 って、あんたの入れ知恵か!
 わたしはレイルの方をキッと睨みつけた。

 彼はわたしの視線から逃れるように、「よし。二人とも今日は俺と遊ぼうか!」と双子に話しかける。

 あ、逃げたわね。

「じゃあ一緒に空飛ぶ?」
「それはまた今度」

 しかも自分は背中乗せてもらわないってどういうことよ!

「じゃあまた剣教えて!」
 フェイルはたたっと森の中へ入っていき、適当な木の棒を見つけて戻ってきた。
「ああいいよ」

 ファーナも同じように見つけてきた木の棒を一緒になって振り回している。

 男の子の遊びだけれど、幼い頃って木登りとかわんぱくな遊びに夢中になるのだろう、ファーナも楽しそうに剣技を学んでいる。

「今日は災難だったわね。こちらに来て早々、ごめんなさいね。ドルムントから聞いたわ」

 三人が遊んでいる風景を眺めているとレイアがわたしに話しかけてきた。

「あはは……」

 うーん。ここは正直に怒った方が良いものか。子供のしつけは親の務めでしょうとか言った方がいいのかな。でも竜の躾と人間のそれって違う気もしなくもないし、いや、でも人様に迷惑を掛けてはいけませんって万国共通では、とか頭の中で悶々としているとレイアが続けて口を開く。

「あなた、竜の生態には詳しくて?」
「え? 人間に伝わる一般的な知識くらいだと思いますけど」

 わたしはこちらの世界で得た知識を思い出す。

 この世界に生息する竜は三種族。黄金竜と青銀竜、それから黒竜。黄金竜が一番個体数が多くて魔法力も高い。

「わたくしたち黄金竜は魔法の力が強いでしょう。けれど繁殖力はとても弱いの。黄金竜はね、生涯に一度しか卵を産むことができないのよ」

「そうなんですか? 個体数は一番多いって習ったけれど」
「それはたぶん、わたくしたちが意図して子孫を残そうと取り組んでいるからね。けれど、青銀竜の個体数もわたくしたちと大して変わらないわよ」

 鈴のような可憐な声でレイアは言葉を続ける。

「一度に産む卵は大体三、四個。けれど、産んだ卵も半分は孵らないのよ。一個孵ればよいほう。それくらい黄金竜は生まれにくいの」

 わたしははじめて知った事実に小さく息を呑む。
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