悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 エンディングのあとのことはさすがのわたしも予測不可能で、内心ビビっていたけれど。この世界に生まれ変わって、公爵令嬢として生きてきて身につけた感覚がある。

 さすがの王太子殿下も、天下のベルヘウム家の人間にいきなり刃を向けることはできない。婚約破棄の根回しはしっかりと済ませてはあるんだろうけれど、白亜の塔送りとするからにはそれなりの手続きも必要だと思うし、体裁を整える必要がある。

 まずは自宅謹慎(見張り付き)になるかな、と踏んでいたけれど、よかった。

「わかりましたわ」

 向かうことにしましょう、とわたしは素直に従うことにした。
 男たちに囲まれてわたしは大広間から去っていく。

 ヴァイオレンツは本当にリーゼロッテに興味ないようで、会場は卒業式後のダンスセレモニーのための準備に入るらしく、彼らも別の出口へと案内されている最中だった。

「リーゼロッテ嬢。さあ」

 少し気を取られて、足の歩みが遅くなったわたしのことを彼の従者そのいくつだかが促した。
 わたしは、覚悟を決める。
 絶対に白亜の塔になんて行ってやらないんだから。




 その日の夜。

 わたしはこっそりドレスのポケットに忍ばせていた小瓶を取りだした。

 小瓶の中には毒薬。いや、厳密に言うと毒ではない。
 人を仮死状態にさせる薬。

 そして。小瓶の中身をぐいっと飲み干したわたしは。
 一瞬体が熱くなったように感じて、そのまま意識を手放した。
< 4 / 165 >

この作品をシェア

pagetop