悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「えへへ~」
「僕たちえらいの」

「にしても、リジーは料理ができるんだな」
 レイルはわたしと鍋を交互に眺める。

「ま、まあね」

 わたしは明後日の方を見つめた。それなりに顔の整った男に屈託なく笑いかけられると、意味もなくどぎまぎしてしまう。ミゼルはわたしにしてみたら保護者みたいな立場で、レイルはわたしと同じ人間で。なんか、もう……ってなに分析しているのよ。

「ジャム、もう出来上がる?」
「あとこれを入れて少し煮たら完成よ」

 わたしは最後の仕上げに取り掛かることにした。
 あらかじめ絞っておいたレモン汁を回しかけて、ぐつぐつ。

 再びファーナが混ぜると言い出したのでわたしはファーナに木べらを渡した。
 野イチゴはいい感じに煮崩れて、濃い赤色になっている。

 これはもう、パンケーキもいいし、アイスにかけてもおいしいし、楽しみが広がるわぁ。

 あ、そうだ。

「そういえばレイルって魔法使えるんだったっけ?」
「まあ、一応は」
「じゃあちょっと魔法で手伝ってちょうだい」

 厨房にこもって火の番をしていたからちょっと暑いし。

「何を?」
 レイルが首をかしげる。
「うふふ。楽しいこと」

 わたしがニンマリ口元を緩めたものだから三人がそれぞれにきょとんとした顔つきになる。

 実はこっちに転生して、小さなころ親戚のお姉さんに作ってもらったことがあったんだよね。子供はこういうのが好きでしょうって。思えばあのお姉さんは優しかったな。

 もう外国に嫁いじゃってなかなか会えないけれど。

「ティティ、材料言うから用意するの手伝ってくれる?」
「はいですぅ」

 厨房の端っこで存在感を消していたティティに声を掛けると、彼女が元気よく返事をした。
 わたしとティティで厨房内を動き回って目的のものを取り出す。

 ここ数日双子にねだられるままにパンケーキを作っていたから、この厨房色々と揃ってます。
 本当はバニラビーンズとかあるといいんだけど、さすがに無いので今回は割愛。

 言ったらティティがぽんっとすぐに魔法で出してきそうだけど、ほんとどっから出しているのか謎なんだよね。

 材料は牛乳と生クリーム、砂糖、卵(卵黄)。

「手際がいいな」
「お菓子作りはよくやっていたから」
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