悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「あんまり近寄ると熱いわよ」
 わたしは一応注意をする。

「んー。平気だもん」
 ファーナは目をきらきらさせて鍋の中をじっと見つめる。

「もうできた?」
 待ちきれないのかフェイルが尋ねてくる。

「さすがにまだね」

 わたしは苦笑する。
 焦がさないように根気よくかき混ぜていると野イチゴがしだいに崩れてきて赤い煮汁が鍋の中に広がっていく。

 そうすると、ふわりと甘い香りがただよってくる。

「ふわぁぁ~。あまぁい匂いがする」
 ファーナが蕩ける声を出しつつ鼻をすんすんさせる。
「ねぇねぇ、まだ?」
「フェイルは食いしん坊さんね」

 わたしのスカートをつんつんと引っ張るフェイルのじっとこちらを見つめるまなざしが可愛いすぎる。ほんとう、いたずらをしていないときの二人ってばマジに天使以上に可愛い。

「わたしもかき混ぜたいな」
「いいわよ。ゆっくりね」
「あ。僕も!」

 何事も二人一緒が基本なのか、どちらかがやりたがると片方もやると言い出す。

「はいはい。順番ね」
「はあい」

 まずはファーナと交代して、最初は一緒に木べらを持ってこういう塩梅でやるんだよ、と軽く指導。そのあとは彼女一人でゆっくりジャムづくり。

「わたし上手くできてる?」
「上手、上手」

 褒められたファーナが「えへへ」と照れ笑い。

 ああもう、可愛いなあ。

 ファーナとフェイルがかわりばんこにジャムを作っていると、後ろから「あ、厨房が爆誕してる」という声が聞こえた。

 わたしと双子竜が同時に振り返る。

「あ。レイル~」
「いらっしゃい」

 明るい声を出したわたしたちに軽く手を上げたレイルが厨房内へと入ってくる。

「なに作っているんだ?」
「ジャムだよ~」

「わたしたちが小さな赤い実を森に取りに行ったの」
「ファーナずっと遊んでいただろ」

「それを言うならフェイルだって」
「野イチゴのジャムをつくっているのよ」

 双子たちに説明を任せていたら陽が暮れそうなのでわたしは代わりに答えた。

「へえ~、すごいな」

 レイルがレンジの近くまでやってきて、鍋の中を覗き込む。わたしのすぐ横にレイルの顔。
 うわ。ちょっと近い。

「わたし手伝ったの」
「僕も」

 双子たちの嬉々とした声にレイルは「そうか。二人とも手伝ってえらいな」と言った。
 ふわっふわの金髪をくしゃくしゃと撫でまわすと二人がきゃらきゃらと笑いだす。
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