悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「僕だって魔法使えるのに。黄金竜なのに。ずごーんと魔法技出せるのに」

 フェイルはまだ不満らしい。

「はいはい。いまはずごーんと魔法技はいらないから。フェイルはこっち。この生クリームを泡立ててね」

 わたしとしてはさっさと完成させたいので失敗の少なさそうなほうを選びたい。ということで今回は人間のレイル一択なのですよ。ものの加減とか、一応ちゃんとわかってそうだし。

「リジー冷たい」
「あなたたちには前科がありすぎるのよ」
「ですですぅ」

 などと軽口をたたき合っているとレイルが魔法で氷を出した。

 ちゃんと風魔法で氷を細かく砕いてくれているから、彼の魔法センスがいかに高いかってことが分かってしまう。

 ちなみにわたしはというと、炎系の魔法は得意なんだけど、反対に水系の魔法は不得手なんだよね。普通にあたり一面まで氷漬けにしそうで怖いわ。って、彼の前で魔法が使えることは一応内緒にしておきたいから言わないけれどさ。

「こんな感じでいいのか?」
 バットを入れたボウルの中に氷を出したレイル。
「ありがとう。レイルすっごい魔法上手いのね」
「まあね」

 あ、まんざらでもなさそう。

 わたしはボウルの中身をゆっくり混ぜて、冷え具合を確認。
 フェイルは魔法を使いたいみたいだったけれど、ちゃんと生クリームをかき混ぜてくれて、それを冷めた液体に投入。

 さて、仕上げです。

「ええ。あとは氷が解けないように冷たい冷気を出し続けてくれるとありがたい。具体的に言うとね、この液体を徐々に冷やし固めたいの。あ、でも一気には駄目。空気を含ませつつかき混ぜたいから。時間がかかると子供たちも退屈しちゃうから、できれば早めに冷やし固めたいけど」

「……なんか、注文が多いな」
「あはは。……できる?」

 レイルのジト目にわたしは乾いた笑い声を出す。
 ま、自分でもムチャを言っているのは分かっているからね。

「ふっ。俺の実力を見せてやるよ」
「うわぉ。頼もしい」

 とりあえず持ち上げておくことにする。

 気をよくしたのかレイルはわたしのお願い通りに冷気をボウルの下のボウルの中に出してくれる。すると冷やしすぎたのかボウルの外側が徐々に凍り出す。

 わたしは材料を合わせた液体、要するにアイスクリームの原液をゆっくりとかき混ぜる。
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