悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしが朝起きて夜寝る前にどんなことをしているのかしっかりと把握をしているファーナたちは、当然のことながら全部のことに対して興味を示している。

 一度はお風呂の時間に突撃されたくらいだし。
 人間の生活に興味津々なファーナとしてはどうやら一緒にお風呂というものを体験してみたいらしい。

 けれど、わたし的にはお風呂くらいはゆっくりと入りたい。
 用意されている湯舟はわたしが足を延ばしてもまだ余裕があるくらいにゆったりしたつくりなんだけどね。温泉くらいに大きな湯舟ならまあいいかな、とも思うけれど。

「あ。でもお母様がね、鱗のお手入れには温泉も効果あるのよって言っていたの」
「温泉?」
「うん。しっとりするんだって」
「へえ。温泉もあるんだ。この世界」

 わたしは感心してつぶやいた。

「あ。フェイルだ」

 ファーナの声にわたしが顔を上げると、部屋の扉が少しだけ開いていて、フェイルが顔をのぞかせていた。

「こっちいらっしゃい」

 わたしが声を掛けると、フェイルがおずおずと足を踏み入れる。
 この間は突撃してきたのに、あのあとレイアにこっぴどく怒られたらしい。

 曰く、寝支度をした女の子の部屋に入ってはいけませんって。
 わたしがわりと遠慮なしに子供たちに口やかましく説教するせいか、レイアもだいぶ肩の力が抜けてきたらしい。最近はお母さんらしく注意する姿が板についてきた。

「いいの?」
「ちゃんと部屋の主に断りを入れて、許可を取ったらいいのよ」

 フェイルがわたしの前までやってくる。
 フェイルがじぃっと髪を梳いてもらってるファーナを見つめる。

「フェイルもする?」
「んー。お父様が人間の男の子はこういうことはあまりしてもらわないんだぞって」
「人にもよるし、あなたくらいの年齢の子供ならまだ甘えてもいい年頃よ」

 はい、交代とわたしはファーナに終わりを告げた。
 ファーナは大人しく場所を代わる。

「フェイルだって鱗のお手入れ、レイアにしてもらうんでしょう?」
「うん!」
 フェイルが嬉しそうに頷いた。

「えへへ。リジーはお母様みたい」
「それって褒め言葉なのかしら」

 一応わたし、まだ十七歳なんだけど。
 最近所帯じみてきたな、とは思うよ。いや、マジに。

「褒めてるー」
「てるー」

 双子が合唱する。
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