悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「それだけ子供たちはあなたのことが好きなのよ。さあさ、今度こそ出発よ。リジー、こっちへいらっしゃい」
「レイルは私が乗せていこう。フェイル、おいで」
「じゃあファーナはお母様とリジーと一緒ね」

 レイアの背中にわたしとファーナが、ミゼルの背中にレイルとフェイルが乗って、黄金竜たちはゆっくりと浮かび上がる。

 前に双子たちの背中に乗ったときはまるで違う安定感にわたしは歓声を上げる。
 今回はちゃんと空の旅を楽しむ余裕がある。

「魔法をかけているから安心安全よ」

 ぐんぐんと加速をしているはずなのに、わたしの周りをまとう空気は平時のそれと変わらないし、会話をすることもできる。

「たしかに! うわぁぁ。森があんなにも下だわ」
 ずいぶんと高いところまで飛んだのに息苦しくないし風圧も感じない。
「これから向かうのは大陸の中心ね」

 雲が近い。
 ひとの手が入っていない竜の領域の上を飛んでいるから、下の世界は緑色と川の碧、それから大地の色だけ。

 眼下に鳥の群れが見てとれる。

「わたしたちもお供していますよぉ」
 隣に姿を現したのはティティ。
「ドルムントも?」
「はいですぅ。彼はミゼル様と一緒ですぅ」
 ティティが体を回転させる。

「お母様の背中に乗っていると安心するの」

 一緒に乗っているファーナが内緒話をするようにわたしに話しかけてきた。

「たしかに。大きくって頼もしいものね」
「わたしはまだ……こんなに高く飛べないんだ。だけど……ちゃんと練習したら、いつかわたしの背中にも乗ってくれる?」

 わたしは出会って間もないころの恐怖飛行体験を思い出す。
 あれは生きた心地がしなかったわ。

「……」

 ノーコメント。あれはマジに怖かったから。

「あらあ、信用無いわね~。ファーナ」
 レイアはくつくつと笑い声を出した。

◇◆◇

 飛行を続けてどのくらい経過したのかな。時計が無いからいまいちわからないけど、まあ小一時間くらいはレイアの背中に乗っていたと思う。

 わたしたち一行は大きな山脈の一角に着地をした。
 木々は少なくて、山肌が直に見えている、なんとなく痩せた土地、みたいな場所。

 視界に映る範囲、割と少なくない場所で湯気が立っているのがわかる。気温も谷間の黄金竜夫妻の棲み処よりも高い気がする。というかこれは熱気ってやつかな。
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