最悪な恋の落ち方



その後、健康診断のことを思い出した草介は大慌てで病院へと向かった。受付で一時間以上も遅れたことに対し、どこか嫌そうな顔を向けられたものの、事情を説明すると何とかわかってもらえた。

「はぁ……」

待合室の椅子に座り、草介は大きく息を吐く。手に持っている明日菜がくれた水が、先ほどの出来事を思い出させた。同時に、もう二度と会えないかもしれない相手への恋心を思い出し、胸が痛くなる。

「五十嵐草介さん、どうぞお入りください」

白い清潔そうな服を着た看護師に声をかけられ、草介は「はい」と言い立ち上がる。これから憂鬱な健康診断だ。

「お願いしま……す……」

開いたドアから診察室へ足を踏み入れた時、草介は驚きで固まってしまった。相手も同じように固まっている。

「あんた、さっきの……」

診察室の椅子に座って白衣を羽織っていたのは、先ほど草介が恋に落ちた明日菜だった。

二人の恋の物語は、まだ始まったばかりである。
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