君と私で、恋になるまで




「……ぶ、舞台挨拶ですか…!」

「そうなんですよ。枡川さん、ご興味ありますか?」

柔らかい日差しで思わずまどろんでしまいたくなる、昼下がりの午後1時半。

今日も今日とて会議室にて対峙するクライアントの香月さんは、優しい笑みで私を癒してくださる。





◻︎

コンペで勝ち取った香月さんの会社の案件が動き始めてからそろそろ1ヶ月。
うちの会社のプロジェクトチームも少しずつ忙しくなってきている。

チームリーダーである私は、香月さんの会社へ伺うタイミングも格段に増えていた。


香月さんとの噂の一件で、一度は会社を訪れるのが怖くなっていた私を見透かしたかのように悪戯な笑みで迎えた奴の顔もはっきり鮮明に思い出すことができる。

お陰で今も問題なく訪問できているし、感謝しかないのだけれど、同期だからって簡単にあんなことされて助けてくれたりしたら心臓がもたない、とも思う。




今日の打ち合わせ事項が無事に終了し、お礼を言って席を立とうとした時。


「仕事とは関係ないんですけど、ちょっと良いですか?」
と、声をかけたのは香月さんの方だった。


そうして、冒頭の会話に戻るわけである。



< 37 / 314 >

この作品をシェア

pagetop