君と私で、恋になるまで





眉間にシワを寄せて奴を見上げるも、本人は全く気にしてないらしい。

くあ、と猫みたいなあくびをかましてくれた。


180センチ近い長身のくせして少し猫背気味の男は、雰囲気そのものがとにかく気怠い。

それなのに、焦茶色で襟足を程よく刈り上げたヘアスタイルも、奥二重の黒い瞳も、やけに綺麗で整った鼻筋も、細いくせして喉仏が凛々しく見える首も。

その全てを含めて女子社員に「瀬尾さんって他にはないアンニュイな雰囲気あるよね」なんて甘いため息を吐かせてしまうのだから、困る。



"あんた達って、やっぱセフレなの?"


ふと、亜子の言葉が蘇り、ぼ、という効果音と共に顔の温度が上昇したのが分かった。

あいつ許さん…


「…枡川、どーしたのお前。いつにも増して変だけど。」

「なんでもないんだけど!?」


返答が何故か疑問形になってしまい、それにまた瀬尾は怪訝そうな顔を向ける。

というか今この男、いつにも増してって言わなかった?



「…そうだ、今日18時半でいい?」

「あ、うん!現場あるからそのままお店向かうね。」

「りょーかい。じゃ、また後で。」



ふ、と微かな笑みを浮かべた瀬尾は、ひらりと手を振って自分のデスクへと去っていく。


そのすらりとした後ろ姿を見ながら、私は溜息を漏らす。


瀬尾。

私とあんたの関係って本当に、一体全体何なんだろうね。







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