君と私で、恋になるまで
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それから研修が始まって、すぐの頃だった。
「…瀬尾、悲しい。」
昼の時間、何となく男子数人で集まって食事をしていた時。
コンビニのおにぎりを開封しながら、暗い顔で古淵がそう呟く。
「なにが?」
「…枡川、彼氏いるんだって…」
半ベソの顔で告げられた言葉に、俺は少し手を留めてしまった。
そして、ふぅん、とだけ呟いて買ってきたコーヒーを一口飲む。
周りの同期1人の「お前いつの間に聞いたんだよ」という正しすぎる疑問に、
「…さっきのマナー研修の時。」
と、なんてことない顔で返答していた。
本当にこいつはいろんな意味ですごい。
「まあいるだろあんだけ美人なら。」
「しかも愛嬌あるし感じ良いし。」
口々にそう言いながらも、どことなく落胆を見せる一同。ちなみに島谷にも聞いたら、彼氏はいないけどお前にも興味は無いと言われたらしい。
なんて容赦のない女だ。
「すごいな俺らもちょっと罵倒されてみたいな」
なんて、頭の悪そうな会話を聞き流しながら。
__彼氏、いるのか。
もう一度胸で、繰り返した。
まあ俺には関係ないけど。
そう言いつつ、何となくそこから研修中にあまり枡川に近づかなくなったことには、気づかないふりをした。