まっしぐら!!
「おはよー。」

できるだけ大きな声で。昨日からグループに入れてもらった、グループ仲間の夏奈と千夏に声を上げる。

「あっ、綺那ちゃんはまだ来てないの?」

「そそっ。なんかー、電車が遅れてるらしいよー。」

そのまま、沈黙が流れる。夏奈と千夏が凄まじく気まずそうな表情をしている。

「あー、今日暑いのー。」

千夏が耐えきれないようにぼやいた。

「それな。めっちゃ暑い。てか天気予報見た?今日やばくね?」

「わかる〜。もうダルすぎてサボろうかと思ったもん。」

「サボるのはやめとけって。お前ただでさえ顔が治安悪いんだよ。」

「いや夏奈も同類じゃん?」

「その点真凜は治安良すぎて心配だわぁ。」

「え、わ、私?」

急に話を振られて真凜はどぎまぎする。夏奈も千夏も、根っからのいい人だったから、真凜が話し始めるのをにこにこ待っていた。

「私、全然だよ〜。こーみえて、結構ワルだよ?」

「そゆとこだよー。てか純粋すぎて騙されそうなんだけど真凜。」

「分かる。まぁ夏奈も純粋だと思うけどな。」

「それは無い、てかさ、昨日真凜さ、告った?」




「……あっ。」

唐突すぎて。びっくりしたまま、真凜は固まった。なんて言われるんだろう。急に肩をすくめる。こんなさり気ない言葉に恐縮してるなんて、私、情けない。そう思いながら、言葉に詰まる。


「すごいじゃんねー。頑張りなよー?」


心が解された。


意地悪でもなんでもない、素直な優しさが、心にストンと、落っこちた。


「ありがと。頑張るって。」


振られた昨日のダメージが、一言で消化される。心も体も、前を向く。昨日のことは、忘れられない。けど、けど、友達がいるんだもんね。



「おはよっ」



気づけば、綺那も教室に入ってくる。リュックサックを背負いながら、にこにこっと挨拶を交わし、可愛く欠伸をする。


「おはよっ」


ここが私の居場所。きっとそうなんだ。


だから私、振られても諦めらんないや。
< 3 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop