Dying music〜音楽を染め上げろ〜
次の日,今日は学校登校日じゃないから家で自習だ。学校からもらった課題を解いていく。
…あの3人。あのあとも毎回のように保健室にくるようになった。どんなに追い払っても諦めようとしない。マジで意味わかんないわ。
「麗華ねぇここ分かんない。」
「んーどこ?」
木曜日は麗華ねぇが大学休みの日だから一緒に勉強する。何だっけ、全休って言うらしいよ?
麗華ねぇは英文学科だから英語や語学に関しては先生並み。サークルも国際関係の団体に入っている。高校受験の時も教えてもらった。
課題が終わると自室に戻る。作業があるから。
「麗華ねぇはまだ勉強するの?コーヒーいる?」
「レポート終わらす〜。コーヒーブラックでお願い!ありがとね」
ブラックなんてよく飲めるなって思う。あんなに苦いやつ。そう思いつつコーヒーを注ぐ。ついでにクッキーを添えて麗華ねぇに持って行く。
「夏樹は?これから編集?」
「うん。録った音源の。3つも溜めちゃった。」
「たまには休憩しなよー?」
「うん。」
さて、やるか。
先週と先々週に録音したのが3つ。一曲は半分までやったから2番から。
この編集ソフトも長い付き合いだよ。アップデートはしているけれど、かれこれ4年は使ってる。
このパソコンだって雄大さんのお古。性能はいいよ?容量も大きいし、何でもできる型だから。
あとは、コネクタを準備して。マイク…はまだいいかな。もし録り直すんなら次だ。
パソコンとヘッドホンを繋いで…準備完了。
自分の音源を聴きながらバーをいじっていく。エフェクト入れたりケロケロボイス風にしたり少しずつMIXしていく。
「ここは、原曲に合わせてザラザラ感出して…」
ピッチ修正もして…と。
俺はあんまり過度な編集はしない。例えば、音程いじったり機械使って音域広げたりするとか。
そりゃ機械使えば悪かった箇所とかすぐに直せるけど,それは自分の歌声じゃない。機械音など原曲っぽく編集してあとはそのまま。ノイズ取り払うくらい。
歌声と表現力だけで人を引き込む。
顔出しなんてしない。
雑談放送なんかもしない。
信じるのは自分の歌唱力のみ。
それがCyan。
一曲終わった。
続いて二曲目。曲名は『自傷』
曲名通り,自傷行為が主題となったもの。そしてこれはFirst Kingを作詞作曲したサクトさんの曲。
絶望感に溢れた少年が自分を傷つけていくもの。この曲は感情込めやすかった。歌っている最中に気持ちが昂って声が裏返ってしまった部分もあったけどそれもまた個性。自分がいいなと思った箇所を厳選していく。
歌う曲はほとんどがボカロ。たまにJ -pop。ただカバーしている曲に共通していることがある。
それは,曲の多くが暗い曲だということ。
いじめ・自殺・絶望感・悲しみ・怒り・社会への不満・自己嫌悪。そんな歌ばっかりカバーしている。『クラッシュエンド』は数少ない歌った中で比較的前向きの曲。
別に好きで歌ってんだからアンチが来ようと批判されようと知ったこっちゃないけど。
数時間後,やっと作業が終わった。
下に降りると麗華ねぇがいなくて代わりに蓮が帰ってきていた。
「おー夏樹。あ,麗華ならバイト行った。」
「そうなん。」
「ただいまー」
雄大さんも帰ってきた。お、あの箱は…
夜はみんなでアイスかな。
そう思ったとき、