Dying music〜音楽を染め上げろ〜

プルルルル…プルルルル…


急にスマホが鳴った。




…師匠？





ー『もしもし。』

ー『突然悪いな。』

ー『いえ。どうしたんですか？』

ー『今日の8時からのバンドが急にキャンセルになってな。30分だけ空きができた。どうする？出るか？』




え、まじ？





ー『出たいです。』



出れるなら出たい。最近歌い足りないんだ。
もっと場慣れもしたい。



ー『プライベートじゃないけど大丈夫か？』





…あァァ、そっちかぁ〜






Midnightには2つのライブパターンがある。


一つは一般的なお客さんがいる中でするごく普通のスタンダードライブ。もう一つは特定のお客さんしか見ることのできない，プライベートライブ。いわばVIP。


Midnightでは3年以上の常連さんかつ、師匠から許可を得たお客さんしか見れない。その客の多くは師匠の友人。20代の若者に関してはほんの数人。



俺はギターソロやコラボはスタンダードライブで行うが、Cyanとして歌うのはプライベートライブだけだ。



勝手にプライベートの方だと思ってた。





ー『どうする？』

ー『ギターだけで出ていいですか。』

ー『わかった。音源の用意はいるか？』

ー『「心温」お願いします。』




アップテンポロックの「心温」。前から練習していたからお客さんの前で試してみよう。





ー『１曲か？』

ー『はい。7時には入りますね。』

ー『わかった。』






電話を切ると雄大さんと蓮に事情を伝えて食当を代わってもらった。



明日は祝日で休みだから学校登校もない。



この曲だとギターは…テレキャスターにしよう。TAB譜も持って行ってあっちで最終確認しとけば大丈夫かな。


衣装どうしよう。今日もともとはなかったから何も用意していないや。



クローゼットから服を探す。




オーバーサイズのTシャツ、下はスキニーパンツにしよう。夜まだ寒いからウィンドブレーカー羽織れば丁度いいか。メイク…家で全部やって行こ。一曲だけだし、軽くしとけばオッケー。



ヘッドホン、譜面、その他諸々詰め込んで。



夕飯を少し食べてから家を出た。