あの夏空の下、君と生きた七日間。
第一章 空に祈る少女
初夏の朝。けたたましいセミの合唱が耳の鼓膜を、これほどまでかとくすぐっていく。ついさっき登ってきたばかりの朝陽は、白く目映い光と共にぎらぎらと、アスファルトの地面を照りつけていた。

時刻はまだ早朝5時だという、何気ない生活音も聞こえてこないような時間なのに、随分と日の出がはやいものだ。

そして、夏の本番はもう来たと言われているような蒸し暑さ。

汗が頬を伝い、走る気力が失われていく中、住宅街や商店街があるいつもの見慣れた街並みを僕は必死で駆け抜けた。

もちろん、学校に遅刻してしまいそうな時間ではない。ただの早朝ランニングだ。

数年前、ある理由で不登校をしていた僕は幼なじみに運動不足を心配されて、早朝ランニングに連れ出された。

当時は乗り気でもなかったが、長い距離を走った後の達成感と爽快感が自分でもびっくりするくらい心地よくて、その日の機嫌はこころなしか、晴れやかだった。それからというもの、毎日やる日課のようなものになっている。

このジリジリとした暑さの中で走るのは、さすがに三キロがやっとのことであった。まだ七月上旬のはずなのに、数日前までの梅雨はどこにいったのやら。

荒い息を整えながら近くにあった、緑の草木が生い茂る草原に腰かける。それから水分補給をした。カラカラに乾いた喉に新鮮な水が蓄えられ、生き返ったような感覚に陥る。この上ない爽やかな気分を覚えながら辺りを見渡した。
< 1 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop