泣きたい訳じゃない。
結局、夕食も取らずに眠ってしまった私達は、朝起きた時には、お腹がペコペコだった。

身体中が怠くて、外に出かける気にもなれなくて、ルームサービスを頼む事にした。

ルームサービスが来るまでの間にシャワーも浴びた。

同じ朝を迎えたけれど、想像してた以上にロマンティックからは、かけ離れていた。

私達らしいけど・・・。

朝食を済ませると、また眠気が襲って来る。

「莉奈、お願いだから寝ないで。俺、夕方の飛行機でバンクーバーに戻らないといけないから。ちゃんと話をする約束だろ。」

「うん、分かってる。」

そう言いながらも、疲れた身体がお腹いっぱいになったら、睡魔に勝てるはずもなかった。
それに、拓海の腕の中は、どこよりも安心できる私の居場所だから。

多分、1時間程眠ったと思う。
ソファーで拓海に抱かれた状態で目を覚ます。

拓海も寝てるじゃないか。

私は、拓海を揺さぶった。

「起きてー。時間なくなっちゃうよ。」

「莉奈が言うなよ。先に寝たのはそっちだろ。」

まだ眠そうな拓海は、私の頭を引き寄せて自分の胸にくっ付けた。

「拓海が昨日の夜、眠らせてくれなかったから悪いんだよ。」

「莉奈が俺を挑発したくせに。」

何ヶ月も会わなかったのに、時間を一瞬で飛び越えた。
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