泣きたい訳じゃない。
二人の本音
「コーヒー淹れるね。」

私達は、ダイニングテーブルに向かい合って座った。

「莉奈の聞きたいことは?彩華のこと?」

「『彩華』って言わないで。ムカつくから。」

「ごめん。」

「彩華さんとはどれぐらい付き合ってたの?どうして別れたの?日本にいる時に会ったりした?」

私は聞きたいけど聞きたくない質問を矢継ぎ早にした。

「彩華さんとは、ロスに発つ半年前ぐらいに知り合って、日本にいる間だけでもって言われて付き合った。実際、ロスに来る前に別れるつもりだった。」

「別れるつもりで付き合ったの?」

「高田ホテルズとの関係もあったし、無碍にはできないと思ってしまった。それが却って、彼女を傷付ける結果になってしまったけど。」

「最低。」

「俺のこと嫌いになった?」

「ならない。でも、何故別れなかったの?彩華さんのこと好きだったから?」

「別れようと思ってけど、泣かれて言い出せなかった。距離が離れれば、俺のことなんて忘れるとも思ってた。『好き』とは違うけど、多少の情はあったかもしれない。」

「でも、彩華さんは忘れなかったよ、拓海のこと。」

「今なら分かる。遠距離になっても、忘れられないこともあるって。結局、彼女が『ロスに留学する。』って言い出してから、別れを切り出した。その時も泣かれたけど、流石に彼女の人生を負えないと思って。」

「自分勝手過ぎる。」

「俺も反省してる。」

拓海の行動を最低だと思う反面、彩華さんの事を好きじゃなかったと言う拓海に安心してしまった私も最低だ。
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