ふたつの愛し方
Episode:20
皆に、おかえり、と。

待ってたよ、と出迎えてもらえて。

忙しいながらも平穏な日々が過ぎて、早くも半年が過ぎていた。


この頃から、佐々木さんや同僚から。

まだ結婚しないんですか?

プロポーズはまだですか?と訊かれるようになった。

本当にまだだから、と訊かれる度に返して……

そろそろかな、と思い始めていた。

器械出しも英介は、私が居ない時は佐々木さんに任せるようになっていて、佐々木さんには直接は言わないけれど、腕が良くなった、と言ってたし。

私専用だった隣も、2年半くらいと緊急の時も譲れるよね。

だって、2年半くらいは無理でも日勤の時のオペの時は、私専用だもんね。



「英介……もう呑まない。避妊もしないで?」


「……本当にいいのか?」


「いいよ。出産をたくさん経験して……英介との子供を産みたいって……実は帰国してから思ってたから」


朱希……ありがとう、と強く抱き締めて、俺も思ってた、と。

なかなか言い出せなかった、と。


「その代わり、朱希の身体に負担が掛かる無理なことはするなよ。自然に任せればいい、授かりものだからな」


「うん。もしも出来たら……うちの病院で産みたい。ダメだよね?」


「実はな。俊也と色々あった立花は、助産師の資格も持ってる。俺も海外で経験したからな。朱希が望むなら俺が取り上げたい」


余りに嬉しくて、英介に抱き付いていた。

そんなの、産まれてくる子供にとっても嬉しいよ。

パパが取り上げてくれるんだよ。

だからね。

お願いします、英介。

任せろ、と微笑んでくれる。



そしてーー、

英介は病院の経営が黒字なのを良いことに、いざって時にも対応できるようにと分娩台と経膣エコーを、導入すると言い出した。

誰かが反対しそうだけど、海外で英介が経験した事実に、誰も反対はしなかったらしい。

これで事件や事故に巻き込まれて、救急で運ばれて来た妊婦さんも救えたらいいな。
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