燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「最近、一条先生とは飲みに行ったりされないんですか?」

 私が探るように聞くと、天馬先生の眉がピクリと動いて、あのね、と口を開く。

「何度も言ってるけど、僕はつばめちゃんとの婚約解消をするつもりはないよ」

 なんて律儀な人なんだろう、と思う。
 いや、むしろ『野心家』とでも言うべきか。彼はどうしてもうちの病院を継ぎたいらしい。



 私としてはとても残念なことに、天馬先生は、『一条先生と』ではなく『私と』婚約している。
 私と結婚すれば、天馬先生は、うちの『東雲』姓を名乗り、市で一番の私立総合病院にして、市内でたった二つの三次救急対応病院である『東雲総合病院』の病院長となることが確約されているからだ。

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