燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「もちろん私も、私から婚約破棄するつもりはないですけど……。だけど、婚約しようが結婚しようが、天馬先生が『心に決めた女性』を思い続けるのは自由ですからね」

 私は言った。

 そうだ、これは政略結婚前提の婚約で、なにも、心まで私に渡さなくてもいい。
 私は天馬先生と一条先生が仲良くしていても全く構わない。というか、どんどんしてほしい。

 それくらい、私は二人を眺めているのが好きだったし、ついでに言えば、私自身、天馬先生自身に男性として好意を持っているわけではなかったのだ。

 すると、天馬先生はため息を一つ。
 そうね、仕方ないわよね。『東雲総合病院』の病院長になるには、私との結婚は嫌でも避けられない道だもんね……。

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