燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「拓海、おはよー! ねえ、起きて!」
ぼふん、とシーツの上から乗っかられて、
僕はその主を見て、少し怒った顔をして見せる。
「つばめ。僕、さっき寝たとこなんだけど……」
しかし、相手は僕が怒ってないことなんてお見通しで、
僕の腕をもつと、
「いいから! 見て!」
と僕を引き起こした。
記憶をなくした彼女はとてもわがままで、まるで子どもだった。
でも、つばめが僕にわがままを言ってくれる、そんなことが嬉しかった。
つばめに手を引かれて、ベランダに連れていかれる。
そこにはスズメが三羽、パンくずをつついていた。
「スズメ?」
「うん、ベランダに来たからパンあげた。かわいいでしょ! 拓海に見せたかったの!」
スズメを見て嬉しそうに微笑む彼女を見て、僕も笑う。
僕はそのくるくる変わる彼女の表情が好きで、彼女ばかり見ていた。
それに気づくと彼女は、『ほんとに拓海ってつばめちゃんのこと、好きよね』と笑うのだ。