燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「すっかり抜けてた。ごめん。落ち着くまで僕はリビングのソファで寝るから」
先生はそう言うと、私をベッドに座らせ、頭を優しく二度叩いて部屋を出ようとする。
私は思わず、出ていこうとする先生の服を掴んでいた。
「だめ! それじゃ、疲れ取れない」
「と言っても」
先生は困ったように私を見る。
いや、私も困ってるんだけど、でも……。
だってね。天馬先生って、いや、他の先生もだけど、病院の医師というものは体力勝負な部分が大きい。
父も医師だからわかる。休むときはしっかり休んでおかないと疲れもとれないし仕事にも影響する。しかも夜勤の時は、簡易のベッドでしか寝ていないから余計に家ではしっかり休んでおく必要があるのだ。
(家でもソファで寝るなんて、疲れが取れるはずないじゃない……)