燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「あはは、そんなの分かってるよ」
「なら」
「ごめんね。かわいい奥さんのこと、心配しちゃうんだ」
思わず言葉に詰まった。
かわいいとか、あなた言う人だったのね?
知らなかったし、なんだかやっぱりむずがゆい。
そんなことを考えていると、天馬先生はふっと私の額の前髪を持ち上げる。
そして、顔を近づけてきた。
「ま! まって」
「うん、待たない」
「っ!」
思わずぎゅう、と目を瞑ると、ちゅ、と軽いキスを額に落とされる感触がした。
それから、ふふ、と楽しそうな声が聞こえて、目を開けると、嬉しそうに目を細めた天馬先生がこちらを見ている。
「イヤなら嫌ってちゃんと言わないとだめだよ? 僕は今のつばめを落としたくて、なりふり構ってないんだから」
「なにそれ……」
「じゃあ、いってくるね」
天馬先生はそう言うと、出かけて行った。