燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「おはよう。どうしたの?」

 あー……やっぱり先に起きてたでしょ。
 天馬先生ってこういうところがある。

 自分が起きてたら、起こしてくれたっていいのに。ただ、私を眺めていたりするのだ。
 でも、私は私で、それをくすぐったくも、少し嬉しいな、って思ってる。それを分かってるかのように天馬先生はこういう事を辞めてはくれない。


 私がそんなことを思っていると、先生はぎゅうと私を抱きしめて動かないようにしてしまった。

「ちょ……、また朝から!」
「うん、つばめって体温高いし、やらかくて気持ちいいんだもん」
「……それ褒めてないですよね」

 私はホッカイロかなにかですか!
 それに柔らかいって……絶対誉め言葉じゃない。

 最近少し太りましたけど! 脂肪分はたっぷりですよ!
 私が膨れると、天馬先生は目を細めた。


「僕の奥さんは最高だなって話なんだけどね」


 ちょ……このナチュラルのろけ爆弾発言。
 朝から顔が爆発したらどうしてくれる。

 こういうことを言うのも相変わらずなんだけど、いつまでも慣れない。
 カフェデートの時、あれだけ寡黙だった3年間の先生は一体どこに行ったんだろう。

―――先生こそ、記憶喪失なんじゃない?

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