春永すぎて何が悪い?
久しぶりに龍樹の店まで来る。
定休日だからか、どことなく暗い。

「なんかさー、緑とかあった方がいいんじゃない?」

私がふと思ったことを口に出す。

「緑って?」
「観葉植物。」
「ええー、俺世話すんの?」

龍樹がヘラヘラ笑う。
いやだよ、っていうのが分かる。

「世話が楽なのもあるよ。」
「枯らしたらどうすんの。」
「それか業者に頼む。」

また「ええ〜」と言って笑う。

「なんか入り口こちゃこちゃしてない?」
「そうなの。俺も思うのよ、狭いよね、入り口。」

そう話しながら、こんなに会話するの久しぶりだと気付く。
意外とできるじゃん、私たち。

「でもまあ龍樹の店のことだから、これ以上口出ししない。」

そう言って龍樹の顔を見たけど、龍樹は首を傾げながら入り口の配置を考えているようだ。

「やっぱり女の人入りにくいかなー。」

ふと龍樹がこぼす。

「んー、だって男物しか見えないし、暗いし、コチャコチャしてるし。」
「暗い?」
「うん、まあ別に女の人入らなくてもいいんじゃない?」

私はそう言ったけど、「うーん」と言って顎を撫でている。
納得いってないようだ。

「早くカレー行こ。」

私が階段を登り始めると、少し名残惜しそうに龍樹もとぼとぼ来た。
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