ごきげんよう、愛しき共犯者さま

 何かの間違いだ。
 そう、思った。

「なっ、んで、だって、お兄ちゃんは、」
「あ?」
「月島先輩が、好きなんじゃ、」

 蒼汰先輩と月島先輩がキスしているところを見てしまったあのとき、兄は心底気に食わなさそうで、けれどもどこか羨ましそうで、でも、切なそうにしていた。
 ファミレスでは、ふたりで楽しそうにしていた。月島先輩に微笑んでいた。ただただ、愛おしそうに。それを見て、友人達も「惚れてる」と口を揃えて言っていたから、きっとこっちが正解で、私達が吐き出した花が間違いなんだ。

「は? 好きじゃねぇわ」

 ああ、そうだ。そうに違いない。
 自問自答を終えるのとほぼ同時に、返された低い声。

「病院で、ちゃんと説明受けたんだろ。この花を吐く、条件」
「……っ」
「この()に及んで何をもがいてんのか知らねぇけど、」
「……や、」
「俺が惚れてんのは、」
「待っ」
「千景、お前だ」

 どくりと心臓が揺れて、ゆらりと視界も揺れた。
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