ごきげんよう、愛しき共犯者さま

「……そう、ですか、」

 呟いて、折り畳んでいたテーブルを本来の役目が果たせるようにと設置する。
 長方形のそこへ兄はトレーを置き、「はよ食え」と言いながら何故かその場に腰をおろした。

「あの」
「あ?」
「見られると食べづらいんですが」
「気にすんな」

 薬を飲まないつもりでいたのが母にバレていたこと、母が兄に私の薬を頼んだこと、そしてそれを兄が承諾したこと、そのどれもが私の低キャパな脳みそを混乱させる要因だった。
 だから一旦それを横において、くきゅると控えめに鳴ったお腹のご機嫌を取るために大人しく右に倣えで座って、もそもそとご飯を食べ始めたはいいが、左頬に突き刺さる兄の視線がまぁ痛い。痛すぎる。

「それが無理だから言ってるんだけど」

 ごきゅり。咀嚼済みの卵焼きを飲み込んで、いやお前そもそも論よ? と嫌味込みで言い返せば、「いいからはよ食え」と急かされた。
 急にどうした?
 あれほど私に興味なんてなかったくせに。薬のことだって別にきっちり見届けなくても、飲んだって言えばいいのに。変なとこで真面目……違うな、みみっちいだけか。
 もしゃり。不機嫌ですといわんばかりに顔をしかめておにぎりを頬張る。ほどよく効いた塩を味わいながら、兄の奇行について考察を開始した。

「……なぁ」
「何?」
「お前の、それの原因。誰?」
「っ!」

 しかしそれは、ものの数秒で頓挫(とんざ)する。
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