生贄になる予定が魔界の王子に頭突きを食らわせてしまいました
 ――こりゃぁ落ち込んでる場合じゃないぞ。出された食事はモリモリ食べて、なんならおかわりもして、眠れるだけ眠って体力つけないとなんじゃない?!
 脱走はなんて言ったって体力勝負だからね?!

 ――え? なに? おかわり3回目は食べすぎだって?
 こちとら神の花嫁なんて未知の職業に無理やり転職させられるんだよお前にこの不安わかるかなんなら代わって差し上げても良いんですけど?! 
 いいから早くおかわり持ってきなぁ?! お前らの大事な神様の嫁だぞ私はっ。あぁ、デザートに甘いものも食べたいな?!

 その様子は神殿に仕える巫女と言うよりただの下町のゴロツキだった。

 半ばやけくそ気味に神官たちをこき使ったせいで、なんだか最後の方はこの部屋に来る神官が涙目だったような気もするが、おかげで幽閉されていたわりには髪はツヤツヤ肌はプリプリ瞳はキラキラだ。

 花嫁になるための湯あみの時も、普段は使わせてもらえない薔薇水を使ったからふわりと良い匂いまでする。

 ちなみに湯あみの時にも脱走を考えたが、湯殿の外にびっちり神官たちが立っていたから諦めた。恥をしのんで素っ裸で飛び出しても、すぐに捕まって体力の無駄だと思ったからだ。

 だが、深夜に行われる神との婚礼の儀に参加するのは高位の神官だけだから今よりも逃げる隙が有るはずだ。

「こう、やっぱ狙うなら急所かな……」

 ぶつぶつと呟きながら拳を握り締めるアリシアへ、ついに運命の声がかけられた。



「花嫁アリシア。婚礼の儀を始めます」


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