元彼に買収されました
第一章

再会した2人

私の名前は早川咲希(ハヤカワサキ)。27歳。

自慢だった黒髪も彼と別れてから違う自分になりたくて、茶髪に染めた。化粧だってしなかったのに強くなりたくてわざと濃いめの化粧をするようになった。

結局私は地方の大学に進学し、そのまま地方で就職した。

彼はその後日本最高峰の大学を卒業し何年か働いた後橘不動産の副社長に就任したとニュースでやっていた。

順調な生活が送れていると思っていたのに急に実家から連絡が入った。帰ってきてほしいと。
どうやら本格的に経営が傾いてきているようだった。
そしてお父さんが体調を崩し病気で寝込むようになってしまいお母さんは看病に追われていた。両親は親戚と疎遠で私以外に頼れる人がいなかった。

実家に帰るとかなり痩せた母がいた。
「ごめんね咲希。」
連絡を頻繁にとってはいたけれど、しんどい素振りなんて全然見せなかった。きっとずっと前から心配させまいと明るく振舞っていたのだろう。
「私の方こそなかなか帰れなくてごめんなさい。こんな状況になってるとは思わなくて。私、全力でサポートするから。お父さんの具合は?」

「だいぶ良くなったみたい。ただ会社の買収は免れないって。それでね明日ウチに買収先の企業が来るから説明一緒に聞いてくれないかな。」
買収という響きに心が急に苦しくなった。もうそこまで事態は悪化しているということか。

「わかった。ところで買収先って?」

「橘不動産よ。咲希も聞いた事あるでしょ?」
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