僕の婚約者〜気高き戦乙女〜
「……えっ……」

キサラの言葉にノーマンは固まる。今、キサラは何て言った?大切な妻というのはルリのことだ。しかし、自分のことを何年も前から焦がれていると……。

「もしかして、覚えていてくれたの?初めて会った時のこと……」

こんな状況だが、答えを知りたい。ノーマンはそう思い、問いかける。キサラは暗殺者を投げ捨てるように手を離し、ノーマンの方を向いて「ああ」と答えた。

「博識なお前を見て、あたしも国を背負う者としてそうならなければと努力した。そして、お前との縁談が来た時には本当は嬉しかった。でも、あたしにはすでにルリがいて、おまけにあたしの周りにはお前のような紳士はいなかったから、どうすればいいかわからなかった。傷付けてしまって申し訳ない」

キサラは頭を下げようとする。それをノーマンは止め、顎を持ち上げて軽く唇を合わせた。

「この話の続きは、やっぱり終わってからゆっくりしよう?」

心の奥底にある想いを伝え合いたい。キサラは「ああ」と頷き、ノーマンたちはまた走り出した。
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