嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 次……次があるのか。それを考えただけで、美琴の頭はぷしゅーと音をたてて故障しかけた。

(考えたら負け。考えたら負け!)

 美琴はぶんぶんと首を大きく横に振る。と、じっとこちらを見ている礼と目が合った。

「なにか?」
「浴衣がはだけてるが、いいのか」
「え?」

 礼に言われて、美琴はようやく自分の浴衣が肩から滑り落ちて脱げかけていることに気がついた。

「きゃあ」

 美琴が慌てて直そうとするより早く、礼の手が伸びてくる。

「跡が残ったな」

 彼の長い指先が美琴の胸元をなぞる。そこに視線を落としてみれば、白い肌に赤いしるしがくっきりと残されていた。

「あ……」

 礼はそのしるしに唇を這わせた。甘い刺激に、美琴の背中はびくりと大きくしなった。

「次は、この跡が完全に消える前にしよう」
「えっと、その」

 なんと答えていいのかわからない。美琴が口ごもっていると、礼はくすりと笑って話題を変えた。

「着物は俺が直してやろうか」
「だ、大丈夫です。ご存知の通り、呉服屋の娘ですから」
「そうだったな。では、支度を終えたら朝食にしよう。今日は天気がいいから中庭を眺めながら東屋で食べることにする」

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