消えない傷・消えない痛み

**倒れる



凛は、目を見張った

倒れて行く美桜に気づいて
駆けつけたのが
私と······

あいつ····甲斐 伊織······

あいつの方が早くて
美桜は、地面にぶつからずに済んだが···

「離れて!美桜に触らないで!」
と、私が叫ぶと
伊織と言う男は、一瞬怪訝な顔をしたが
美桜を私に渡した。

その時のあの男の顔が
あまりにも、辛そうで····
悲しそうで····

声をかけようとしたが

「「「みゆ!美桜!美桜ちゃん!!」」」
と、美桜の両親とお義母さんが
駆けつけて
一緒に高木先生も来て
美桜を抱き上げて運んでくれた。

私は、一緒に向かいながら
チラリと彼を見ると
甲斐 伊織は、拳を握りしめて
下を向いていた。

あいつの前を通り過ぎると
高木先生が連絡した
救急車が到着して
美桜は、潤天堂大学病院へと
運ばれた。

美桜は、眠れてなかったようだ。

美桜は、3日眠り続けて
目を開けて
御両親や暖のお母さんと私に
沢山謝っていた。

「私が眠ってしまうと
目をさました時に暖がいなくなって
いるのじゃないかと
眠れなかったの。」
と、話す美桜の目尻から
涙が流れて
私は、その涙を拭いてあげるしか
なくて、自分の不甲斐なさに
たまらない気持ちになった。

それは、美桜の両親も
暖君のお母さんも同じで
みな、涙を流していた。

「美桜、慰めにしかならないけど。
きちんと寝て、きちんと食べないと
暖君が心配するよ。
それにここにいる人達も同じね。
悲しいとき、寂しいとき
笑いたいときは、呼びなさいよ。
すぐに飛んで行くから。」
と、言うと、美桜は
みんなの顔を見て
うん、うん、と頷いた。

きっと、まだまだ
暖君のいない悲しみを
沢山、感じるだろう

だけど、美桜
忘れないで
あなたには、私達がいるから
力ないけど、私の父もいるからね。

その日は、美桜のお母さんが
美桜につく事になり
私達は、引き上げた。

美桜の病室の先には
彼・甲斐 伊織が立っていて
窓から外を見ていた。

「あなた。」
と、私が声をかけると
彼は、私を見た。
「ずっと?」
と、訊ねると
小さく頷いた。
「美桜は、寝てなかったみたい。」
「目が覚めたと高木先生から。」
「そう。あっ、美桜のお父さんが
来るから、でましょう。」
と、私が伝えと
彼は一緒に歩く。

そして
彼は、病院をでると
「自分は、明日アメリカに戻ります。
美桜を御願いします。」
と、言い頭を下げてから
去って行った。

彼は·····

私が思っているのと
ちがうのではないかと
そんな感じがした。
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