消えない傷・消えない痛み

**見たくないもの


毎日が、バタバタと過ぎていく。

親父の病院と潤天堂大学病院を
行き来している。
アメリカからも依頼があれば行く
そんな風に体制をとっていた。

母親は、マリーナを連れて帰らなかった
事を何か言っていたが
父親が、あの娘では
伊織は無理だと一言。

たぶんあの自暴自棄の事を
言っていると思う。

マリーナは、決して悪い女性ではない
だが、俺でない方が良い。
彼女は、きっと幸せになるだろう。

それにしても
病院は、忙しいのに
毎日暇なのか
良く声をかけられるが·····
毎回····ため息と共に
「それは、院内で必要な事だと
思いません。失礼。」
と、通りすぎる。

1日、何度この言葉をはくか。
だが、二、三ヶ月を過ぎる頃には
冷酷···だの
冷徹···だの
気取りや···だの
言いたい放題

まぁ、関係ないが······


そんな毎日の中

ふと中庭を見る
ベンチに美桜が腰かけていた。

なぜ、見つけるんだ
なぜ······
憎いはずなのに······

美桜は、空を見上げて
何かを呟いた
そして、フッと口角をあげた。

俺は、そんな美桜から
目を離せずにいた····が······

立ち上がった美桜の
······おなか·····が······

目眩がしそうになる······

お腹をさすりながら
お腹に向けて
何かを、また、呟いて
美桜は、その場をはなれた。

打ちひしがれる気持ちを
何とか引き締めて
親父の病院へと戻る。

もう、美桜に関わりたくない
そんな気持ちでいっぱいだった。

そんな俺を見ている人が
いた·····とは······。
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