夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜
次の日の帰り。
彼女はまた、中村さんと一緒に駅まで歩いていた。
僕も、また2人を追いかけるように歩く。
同じ方向だから仕方ないけど、なんだかストーカーみたいだ。
ストーカーか。似たようなものかもしれないな。
勝手に思って、勝手に嫉妬して、キレて自分のものにしようとする。
昨日の自分だ。
そんな自分勝手にならないように、今日、ちゃんと話をする。
そう思って、駅のホームで電車を待つ彼女の後ろに立った。
「お疲れ様です」
声をかけると、彼女の背中が緊張したのがわかった。
振り向いた笑顔がぎこちない。
「お、お疲れ様です……」
警戒されている。
昨日僕がしたことを考えたら、当然だ。
わかってはいるけど、落ち込む。
でも、ちゃんと話さなければ。
「あの」
「あっそういえば、噂になってましたよ」
彼女が気まずさをごまかすように、僕を遮る。
「噂?」
「はい。久保田さんが、最近定時で帰ってるって。何かあったのかなって、噂になってました」
女性社員だけじゃなくて社内全体で噂になっていた、と彼女は苦笑混じりに教えてくれた。
「夕ご飯のために、しかも小学生男子が作る夕ご飯を食べるためだって知ったら、みんなどんな反応するのかなって、美里ちゃんと想像して笑ってました」
また中村さんか。
わかってはいるけど、嫉妬してしまう。
僕よりも、仲はいいんだ。仕方ない。
こんな嫉妬はくだらない。してもしょうがないことだ。
抑えろ。
これじゃ、本題に入れない。
「あの」
「あっそれと、本田さんのお祝いなんですけど、今日美里ちゃんと話して、やっぱりオムツケーキがいいねってことになりました」
『美里ちゃん』
抑えたはずの嫉妬心が、飛び出てくる。
「それで、美里ちゃんが手配してくれるそうなので、後でお金を渡すことになってるんですけど、久保田さんも一緒にどうですか?」
『美里ちゃんが』
『久保田さんも』
駄目だ、勝手に距離を感じるな。
そうは思っても、止まらない。
物理的には僕の方が近くにいる時間は長いはずなのに。
「あの、久保田さん?」
彼女が、また僕の顔を覗き込む。
昨日と同じことをしている。自覚あるんだろうか。
「あ、すいません。お祝いですよね。僕も一緒にさせてください」
いつも通りにこやかに言ったつもりだけど、そうはなっていないらしい。彼女が半歩後ずさった。
「じゃあ、後で金額をお知らせしますね」
ぎこちない笑顔。
ああまたやってしまった、と思ったと同時に、電車が入ってきた。