朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
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それは、とある大手製菓メーカーである×社の新商品発表に伴うプロモーションのコンペに参加することになった時だった。
複数のいわゆる“ライバル“となる代理店と一緒に参加したオリエンテーションでは、製品コンセプトや顧客へのアプローチ、広告における要望などが細かく告げられた。
ここからコンペの日までは、各部署が一丸となって、提出する広告の企画内容を詰めていく必要がある。
「……うーん、これ昔発売してたチョコ菓子とちょっと似てますよね。」
「ちょっとじゃねーだろ、
もっと開発練ってからプロモ依頼してこいよ。
復刻版ですか?って聞きそうになったわ。」
「…那津さん、口悪いですよ。
そしてあの場でそんなこと聞かれてたら
私、泡吹いて倒れてます。」
「向こうも本気でぶつかってきてない商品に、
こっちもやる気出るかよ。」
……それは確かに、正論なのだけど。
オリエンテーションの後、オフィスに戻る道すがら、資料を見つめながら呟いた私の言葉に、容赦の無い返答を得た。
溜息を漏らして隣を見ると、元々愛嬌があるとは言えない男が不機嫌そうに両手をポケットに突っ込んだまま歩いている。
長い脚でずんずんと進むから、歩幅の合うわけの無い私は着いていくのに必死だ。
「…あ、那津さん。
帰ったら今日の報告含めてチームミーティングありますから、勝手にこのまま消えたりしないでくださいね。」
「……チーム?
この案件、ほぼ俺ら2人で動いてるだろうが。
打ち合わせ必要無し。却下。」
「いや上から言われてる打ち合わせに"却下"とか無いのですよ。」
「青砥。
上の言う事ばっかり聞くつまんねえ社会人に成り下がんなよ。」
「……絶対面倒なだけですよね。
こちらこそ却下です。3階のroom8ですからね。」
「先輩の言うことはなんでも聞いとけや。
それが社会人だろ。」
「…那津さん、仰ってることのヤバい矛盾に
気づいていただいてますか。」
「めんど。」と全く気力の感じない声で言いつつも渋々了解したらしい先を歩く男の広い背中を暫く見つめて、苦く笑って。
この男と初めて挨拶を交わした時のことを思い出していた。