ピグが生きた一年半
白いねずみ
朝、春の爽やかな日差しで

目が覚めた。


「あれは夢だったんだろうか」


四つんばいになって、

ピグが現れたあたりに

行ってみた。


手に何かが当たった。


カランコロン


白いねずみのおもちゃだった。


「ほんとだったんだね」


男は、ねずみを見つめながら

ピグと遊んだ頃のことを

思い出していた。



はっ、として白いねずみを

握り締めた。



ピグがこの音をたてるのは

いつも決まって男が落ち込んで

辛い顔をしているときだった。


『猫の気まぐれ』なんかでは

なかった。



男はやっとわかった。


ピグが遊ぶときは、

私を励ますとき。



「守られていたのは

私のほうだったんだ!」


どんなに小さくても、

どんなにはかなくても、

男にとってその命は

何より重かった。


   【おしまい】
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