ピグが生きた一年半
本当の別れ
「じゃぁ、わたし、そろそろ

行かないと」



「え、もう行くのかピグ」



寝巻きの袖でごしごし顔を

ふいて頭をあげた。


うっすら見えるピグの顔。


あの頃の怯えた表情が消えて

いるのを、男は今頃気がついた。


ピグの姿がだんだんと

闇に解け始めた。


「なぁ、ピグ。最後にひとつだけ

教えて欲しい、短かったが、

君が生きた一年半は幸せだったか?」



「うん、とっても幸せだった。

生まれてきてほんとうに

よかった」



そう言うと、ピグの姿はすうっと消えた。


男の耳には届かなかったが、

ピグはもう一言最後に言った。




「もし人間に生まれ変われたら、

またあなたと一緒にいたい」と。
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